上溝夏祭り 『てんのうさま』


 江戸時代より神奈川県相模原市中央区上溝に伝わる『上溝夏祭り』は、京都八坂神社の祀神である「素戔嗚尊(すさのをのみこと)=牛頭天王(こづてんのう)」を「八坂大神(やさかおおみのかみ)」として勧請・祀神とする「てんのうまつり」として受け継がれ、『てんのうさま』と呼ばれ親しまれてきた祭りです。素戔嗚尊=牛頭天王は、厄病などの災厄を免れるために祀る行疫神で、そのお御霊を宿した神輿を渡御することにより厄病退散、五穀豊穣、家内安全を祈念します。

 清祓いを受けるため亀ヶ池八幡宮に宮入する神輿

 神輿渡御・山車運行 安全祈願の清祓い

 明治に入り、政府の政策によって八坂大神(素戔嗚尊=牛頭天王)が合祀されている亀ヶ池八幡宮に各町会の神輿が集結し、宮入・御霊入れ・宮出が行われるようになりました。終戦後、天皇崇拝に繋がる神事を禁止するGHQの占領政策により、亀ヶ池八幡宮に集結して御霊入れ・お祓いをうけることが禁じられたため、当時の各町会青年団の発案から、氏子回りを終えた各町会の神輿が旧相模原警察署(現在の上溝本町交差点)に集まり、上溝商店街で渡御を行う、現在の上溝夏祭りの形となりました。

 現在は宵々宮にお仮屋にて御霊入れの儀が行われ、本宮の渡御はお仮屋出発して亀ヶ池八幡宮に直行・参詣して安全祈願の清祓いを受けた後、氏子廻り・夕刻からの上溝商店街渡御となっています。これは、『てんのうさま』当時の名残ですが、現在でも亀ヶ池八幡宮参詣を続けている神輿は、上溝五部会・丸崎・虹吹の3町会のみとなっています。

 式典のため祭典本部前に集結した各地区の神輿・山車

 また祀神を浅間社とする久保、諏訪社とする番田が、『てんのうさま』との両立によって地域発展に寄与していきたいという考え方から上溝夏祭りに参加するようになったほか、新しい町会(自治会)の誕生などにより、現在では大人神輿13基をはじめ、山車8台、小人神輿が一同に会するようになり、42万人(平成24年 主催者発表)を超えるお客様を迎える神奈川県北部最大の祭りに発展。「かながわのまつり50選」にも指定されています。

 上溝夏祭りは本来7月27日を宵宮、28日を本宮として行われてきました。これは「てんのうまつり」が一般的に旧暦の6月15日(新暦の7月下旬)を祭日としていることからと推測されます。その後時代の変化などにより平日の開催が難しくなったことから、昭和52年より7月第4土・日曜(原則)となり、現在に至っております。

素戔嗚尊・牛頭天王


 「素戔嗚尊」(すさのをのみこと)は、「天照大神」(あまてらすおおみのかみ)の弟神として、日本神話であの八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治したことで有名な神様です。厄病に立ち向かう勇敢な神様として古くより崇められてきたといわれています。

 「素戔嗚尊出雲の簸川上に八頭蛇を退治し給う図」 月岡芳年

 一方「牛頭天王」(こづてんのう)は、インドの釈迦の生誕地に因んだ祇園精舎の守護神。素戔嗚尊=牛頭天王とされるのは、平安時代に京都祇園に神様が祀られた際、日本固有の神道と、インドで生まれ伝えられた仏教が混じりあった「神仏習合」として信仰が広まったためといわれています。

 上溝の「てんのうまつり」は、素戔嗚尊=牛頭天王を京都八坂神社より勧請・祀神とする祭りです。愛知の津島神社から勧請するという説もありますが、亀ヶ池八幡宮に合祀されているのが「八坂大神」である点から、京都八坂神社より勧請しているのではないかと考えられます。

 (なお「日本書紀」では『素戔嗚尊』と表記されているのに対し、「古事記」では『須佐之男命』と表記されているなど、様々な表記が見受けられます。)

上溝夏祭りの予定

【平成28年(2016) 開催日程】
・7月1日(金) - 太鼓開き -
 囃子の稽古開始、道切りの設置

・7月22日(金) - 宵々宮 -
 お仮屋設置、神輿・山車 蔵出し、
 御霊入れの儀

・7月23日(土) - 宵宮 -
 山車の運行
 (上溝商店街 歩行者天国)

・7月24日(日) - 本宮 -
 神輿の渡御・山車の運行
 夕刻、上溝本町交差点にて式典
 (上溝商店街 歩行者天国)

・7月25日(月)
 御霊抜きの儀、鉢洗い

上溝夏祭り 開催情報

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